今回は
この息をのむほどに優美な「透胎七宝(とうたいしっぽう)」の器をご紹介します。

幻の技法が紡ぐ、光と色の物語
透胎七宝、あるいはフランス語で「プリック・ア・ジュール(Plique-à-jour)」と呼ばれるこの技法は、まさに「光を纏う芸術」と呼ぶにふさわしいものです。
一般的な七宝焼きが金属の胎(土台)の上に釉薬を施すのに対し、透胎七宝は、まず細い金属線で繊細な文様を形作り、その中にガラス質の釉薬を流し込みます。そして、最も驚くべきは、焼成後に金属の胎を巧みに溶かし去るという工程。これにより、光が直接釉薬を透過し、まるで教会を彩るステンドグラスのように、透明感あふれる輝きを放つのです。
この技術は極めて高度で、制作過程での失敗も多く、完成させること自体が至難の業でした。だからこそ、現存する透胎七宝の作品は数が限られており、その希少性もまた、私たちのロマンを掻き立てる理由の一つとなっています。



食器として使う気にはなれないけど、飾ってるだけでも良さそう♪
手に取るたび、遙かなる時空の旅へ
この透胎七宝の器を初めて目にした時、私は深い感動とともに、まるで遠い異国の、過ぎ去りし時代へと誘われるような感覚に陥りました。
ご覧ください、この鮮やかな瑠璃色のお碗。細やかに施された網目模様は、鱗のようにも、あるいは水面のさざ波のようにも見え、その中に咲き誇る紅と黄の花々が、光を受けて浮かび上がります。
光にかざせば、ガラス質の釉薬が揺らめくように輝き、その奥から湧き上がるような、奥深い色の変化を見せてくれます。いったい、どのような職人が、どれほどの情熱と集中力を注いで、この小さな宇宙を作り上げたのだろうか。そして、どのような人々の手に渡り、どのような場所で、どんな光景を見てきたのだろうか。
想像すればするほど、この器が辿ってきたであろう長い歴史や、遠い文化の物語が、胸いっぱいに広がっていくかのようです。
空間にロマンを灯す、唯一無二の存在感
このような透胎七宝の器は、ただそこにあるだけで、周囲の空気を変える力を持っています。窓辺に飾れば、刻々と移り変わる自然光を透過し、その輝きは刻一刻と表情を変え、私たちを飽きさせません。夜には、間接照明の優しい光に照らされ、日中とは異なる、幻想的な美しさを放ちます。
現代のインテリアの中に、そっと古き良き時代の息吹を吹き込み、唯一無二の存在感を放つ透胎七宝。それは単なる器ではなく、遥かなるロマンを閉じ込めた、小さな宝物なのです。
この機会に、ぜひ皆さんも、透胎七宝が織りなす光と色の魔法、そしてその背景に広がる深いロマンを感じてみてはいかがでしょうか。
【免責事項】
この記事で述べられている製造年代に関する見解は、公開されている情報や筆者の個人的な知見に基づいています。
アンティーク品の正確な製造年を特定するには、専門家による鑑定が必要となる場合があります。
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