今回ご紹介するのは、遥か北欧の地、デンマークからやってきた、とっておきのヴィンテージアイテムです。
それが、こちらのロイヤルコペンハーゲン(Royal Copenhagen)「Tenera(テネラ)」シリーズのベース(花器)です。


手書きの模様が独特でなんだかおしゃれな花瓶だね!
ロイヤルコペンハーゲン Teneraシリーズとは?
ロイヤルコペンハーゲンといえば、美しいブルー&ホワイトのフローラダニカやブルーフルーテッドを思い浮かべる方も多いかもしれません。しかし、20世紀半ば、同社は新たな陶磁器の可能性を探るべく、大胆な挑戦に乗り出しました。
その代表格が、1950年代後半から1970年代にかけて展開された「Tenera(テネラ)シリーズ」です。このシリーズは、それまでのロイヤルコペンハーゲンのイメージとは一線を画し、若き女性デザイナーたちを起用して、よりモダンでアーティスティックな表現を追求しました。
「Tenera」とはラテン語で「繊細な」「柔らかな」といった意味を持ちますが、そのデザインは大胆な筆致と、力強い色使いが特徴的。裏面に見られるロイヤルコペンハーゲンの王冠マークに加えて、「FAJANCE(ファイアンス)」と記されているのがこのシリーズの証です。ファイアンスとは、素焼きの陶器に釉薬を施したもので、独特の質感と温かみを生み出しています。




このベースに宿る、デザイナーの個性と年代
今回ご紹介するベースの裏には、ロイヤルコペンハーゲンのロゴと共に、「K」のサインと、デザイナーの「GHH」と読めるようなサインが確認できますね。
北欧のヴィンテージアイテムも情報がない場合が多く、調べるのが大変なんですが、
この「GHH」のサイン、そして画像から推測されるデザインの特徴から、このベースのデザイナーは、ノルウェー出身の若き女性デザイナー、Grethe Helland-Hansen(グレーテ・ヘランド・ハンセン)である可能性が高いです。彼女はTeneraシリーズ初期から活躍し、北欧の自然や抽象的な模様を大胆な青や緑で表現しました。
この独特の深い青色は、ロイヤルコペンハーゲンが得意とするコバルトブルーとは異なる、どこか野生的で表情豊かな青。素焼きのテクスチャーと相まって、釉薬の濃淡が味わい深く、まるで抽象画のようです。デザインに見られる丸いモチーフは、果実、特にベリー類をモチーフにしているように見えますね。
Teneraシリーズが始まったのが1958年、グレーテ・ヘランド・ハンセンがロイヤルコペンハーゲンに在籍していた時期も考慮すると、この作品は1960年代頃に作られたものと考えられますね。
およそ60年もの時を経て、今もなお私たちの目を楽しませてくれる、まさにヴィンテージの醍醐味を感じさせてくれます。
日常に彩りを加える、北欧デザインの魅力
このTeneraのベースは、それ自体がアート作品のような存在感を持っています。そのまま飾っても空間のアクセントになりますし、野の花やシンプルな枝ものを活けても、お互いの美しさを引き立て合います。
北欧デザインの魅力は、その実用性と芸術性の融合にあると私は思います。日々の暮らしにそっと寄り添いながらも、ふとした瞬間に心に語りかけてくるような、そんな温かさや力強さを感じさせてくれるのです。
このロイヤルコペンハーゲンのTeneraベースも、まさにそんなアイテム。ぜひ、あなたの日常に、北欧ヴィンテージの彩りを加えてみてはいかがでしょうか。